わたしのあたまのなか

わたしのあたまのなかの言葉を書きたい時に書く場所。覚えておきたい出来事やお出かけの記録、おいしいものについてもよく書きます。

わたしと納豆と源氏のはなし

 

今週のお題「納豆」

 

大人になってから好きになった食べ物に、ミョウガや大葉などの薬味や、酢の物などが挙げられると思うが、「子どものころに嫌いだった食べ物」もそれに加えられると思う。

わたしの場合は、そのうちの一つが「納豆」だった。

元々我が家は母が納豆好きで、父が納豆嫌いの家庭だった。嫌いなだけならまだいいが、父は納豆を食べる母のことを忌み嫌い「臭い、臭い」と騒ぎ立て、食事の席を途中で立ったり、不機嫌になった。

あのころ父が母によく言っていたのは「おまえは源氏の人間やからな」という謎の言葉である。父曰く「納豆好きは源氏、納豆嫌いは平家」らしく「俺とおまえは一生分かり合えない人間なのだ(なぜなら源氏と平家だから)」と、わたし自身が大人になった今なら「子どもを2人も作っておいて何をいまさら」と思うような訳のわからないことを大真面目に言っては怒っていた。

もちろん母とてそんな父に負けておらず、子どもながらに(また納豆食べるんや...)と思う頻度で納豆をよく食べていた。わたしは子どものころから父に怒られるのがとても怖く、顔色ばかり窺って過ごしていたので、母と弟が父から「臭い、臭い」と怒鳴られる中、平気な顔で納豆ごはんを食べる姿をヒヤヒヤしながら見ており、わたしは父が家にいない時にだけ納豆をこっそり食べるようにしていた。

そんな環境の中で食べた納豆は、当然わたしの中では美味しいものではなくなってしまい、いつしか好きでも嫌いでもないものへ、さらには好んで食べるものではないものに変わっていった。

 

それが、わたしも歳を取り健康のためにと割り切って納豆を食べるようになるうちに、ここ最近になって前よりも美味しく感じるようになってきた。

最初は匂いが気になるためお味噌汁に納豆を入れて食べていたが、最近のお気に入りの食べ方は、納豆+アボカド+トマト+韓国のりフレークという食べ方だ。アボカドのもったりとした感じと納豆のネバネバがよく合うし、そこにサクサクというトマトの食感もフレッシュな酸味の感じもちょうどいい。さらに韓国のりフレークを入れることでより香ばしくなりおかず感が出るのと、まだ少し苦手な匂いも気にならなくなる。

納豆にタレをかけてぐるぐるっとかき混ぜてから少し大きめの器にそれを移し、レンジで熱を通しておいた賽の目に切ったアボカドと、半分に切ったプチトマトを入れて、韓国のりのフレークをシャラシャラっとかけてから再び混ぜれば完成だ。それを大きめのスプーンで豪快にすくって食べる。 なんとなく合いそうだな、と思って始めた組み合わせが、美味しくてお気に入りとなった。

幸いわたしの夫と息子たちは全員納豆が好きだし、わたしが夕食の席で納豆を食べても、誰も文句を言わないし、責められることも一切ない(普通ないと思うが)。しかし、悲しいかな、それが当たり前の家で育ってしまったわたしは、今でも納豆を人前で食べることに遠慮をしてしまうので、夕食の時に「納豆もあるよ」と声をかけても家族の誰も食べなければその日は納豆を食べないようにする。する、というか、そうしてしまう。そして、翌日の一人の昼ごはんの時に納豆をこっそりと食べるのだ。

そして、ふと思う。わたしは、平家である父に毒されていたけど、最近我を取り戻した源氏なのかしら、と。