わたしのあたまのなか

わたしのあたまのなかの言葉を書きたい時に書く場所。好きな映画や海外ドラマの感想や、覚えておきたい出来事など。食べることが好きなのでおいしいものについてもよく書きます。

散歩部のはなし

 

この前の記事で、

夕方30分の散歩を楽しんでいることを書いたが、

zfinchyan.hatenablog.com

実は2年前から、友人たちと週に1回散歩を楽しむ「散歩部」というものを作っている。

友人とは、息子(9)と同い年の男の子を持ついわゆるママ友たちで、同じ幼稚園から小学校に通っている間柄だが、子ども同士はそこまで仲がいいわけではない。わたしたち親同士は年長さんの時に役員を務めたことで仲良くなっていた。

子どもたちが小学校にあがったタイミングで顔を合わせた時に

「卒園したら自分の時間は増えたけど、幼稚園の送り迎えがないと運動不足になっちゃったね」

「子どもたちを遊ばせるついでに、公園でちょっと喋るってこともなくなったしさみしいね」

「じゃあ、散歩しながら喋る?」

と、いうことで歩きながら喋る「散歩部」が結成された。

散歩部のルールは至って簡単で「無理をしない」である。雨天中止、暑さ寒さは我慢しない、自分がしんどかったらパスをする、疲れたら復路は電車、散歩部は平日の午前中のみ、夏休みなどの休暇期間中は休部にする…など、とにかくお互いに無理をしないことだけを大切にしていたら、もう2年も続いていた。

もちろん夏休み明けの今の時期の散歩部は休部状態だ。

長い夏休みが終わり、友人たちと早く喋りながらお散歩をしたい気持ちはあるが、まだ最高気温が35度の予報が続くこの時期は、日差しが体にこたえるので歩くのを控えている。このようにとにかく「無理をしない」からこそ、居心地がよく楽しくほどよい距離感のままで続けられているのだと思っている。

散歩部を始めて、わたしたちは本当にたくさん話すようになった。

今までなら誰にも言えないままだった心のモヤモヤや家族の悩みなどを散歩しながら打ち明ける。年齢も1歳、2歳差なので身体の不調も似ていて、互いに労り共感できる。宗教や政治やお金の話に対する線引きや価値観がよく似ている。

わたしは友人たちに直接伝えたこともあるが、この年齢になってからこんなにも素敵な友達が自分にできるとは思っていなかった。互いの家の場所は知っているが、まだ中に入れたことも入ったこともない。それくらいのベタベタしない距離感がわたしには合っていると感じている。

 

さて、散歩部にはもうひとつルールがある。

それは「パン屋さんを見つけたら必ず寄ること」だ。

お互いに仲良くなりはじめたころにわかったことであるが、わたしたちにはパンが好きという共通点があった。と、いうわけで歩いた先にパン屋さんを見かけたら、まるでスタンプラリーのようにパン屋さんに寄ることにしている。(わたしは、せっかくなので訪れたパン屋さんのショップカードも集めている)そして、そこで買ったパンを互いに持ち帰り、その日のお昼ごはんにしたり、次の日の家族の朝ごはんにするのだ。ここで「じゃあ今日はうちで一緒にパンを食べよう」とか「ここで食べて行こう」とならないのが、我が散歩部のいいところだと思っている。

みんな喋るのも大好きだが、同じくらい1人の時間も大好きなのだ。散歩から帰ってきて子どもたちが帰宅する前に、少しだけ1人で静かにのんびりと過ごす時間が大切だとお互いにわかっている。

そして、次に会った時に「あのパン美味しかった?」「また行きたいね」などとパン愛を語りながら歩く。時々「遠足」と名付けて電車に乗って降りた先を散歩することもある。1人なら入るのを躊躇するような小さなパン屋さんや、こだわりのある天然酵母のパン屋さんなども、散歩部の部員となら行くことができる。そして「緊張したね」「変わったパンがたくさんあったね」などと話しながら歩いて家に帰り、またそれぞれ1人でのんびりとパンを食べる。

 

運動不足を解消するために始めた散歩部なのに、ほぼ毎週お昼に甘いパンなどを食べていたら意味がない気がするし、実際にこの2年体重は横ばい状態だが、散歩部で過ごす時間はわたしにとって心が潤って幸せを感じさせてくれる大切な場所なので、これでいいと思うようにしている。ちなみに、家のテーブルの上にパンが置いてあると、息子たちや夫は「散歩部で行ってきたん?」と聞いてくる。今やわたしや家族の日常に「散歩部」は根付いている。

いつか、家庭の事情や、体調不良などで、散歩部が廃部になる日が来るかも知れない。けれどわたしは40代になってから友達ができたこと、1人では到底無理だった距離を歩けたこと、思わず足を止めて涙が出るくらい大笑いしたこと。例えこの先廃部になってしまったとしても、そんな幸せな時間が思い出に残るなんてありがたいことだな、と常に友人たちに感謝しながら次の散歩部の活動を待ち遠しく思うのだった。