わたしのあたまのなか

わたしのあたまのなかの言葉を書きたい時に書く場所。好きな映画や海外ドラマの感想や、覚えておきたい出来事など。食べることが好きなのでおいしいものについてもよく書きます。

手紙は憶えている

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とある老人施設で、男性が目を覚ますと、隣で眠っていたはずの妻の姿が消えている。何度も名を呼ぶが、返事もなく姿も見当たらない。

慌てて部屋を飛び出し、廊下で出会った職員に妻の居場所を尋ねると、先週妻は亡くなったと言う。それを聞いて「そういえばそうだった」と、やっと思い出す。

男性の名はゼブ・グッドマン。認知症を患っているため、時々記憶が曖昧になってしまう。

そんなゼブに同じ老人施設に暮らすマックスがそっと声をかける。

「奥さんが亡くなったら、君はこれをやり遂げると言っていたろ?」

近頃記憶が怪しいゼブのためにと、マックスが事細かく書いてくれていた指示書を手に握りしめ、ゼブは施設から抜け出し、夜の道をタクシーで去っていくのだった。

 

一度眠ると、妻が亡くなったことさえ忘れてしまうゼブ。

施設を抜け出した先の列車でうたた寝をしてしまい、目が覚めるとまた妻を探し、今いる場所がどこかも思い出せず、目の前の旅客を家族と勘違いして、自分は何をしているのかもわからなくなるほどの危うさ。

そんな彼が命懸けでやり遂げようとしているのは、かつて収容されていたアウシュビッツから、自分たちユダヤ人のふりをして逃げ切ったナチス兵を探すこと。

愛する妻の死さえ憶えていられない老人が、戦時中家族を無残にも殺害したナチス兵を執念で探す姿がやるせなくて胸を打たれる。

けれど一方で、人畜無害な老紳士の外見からは、一切見えない心の内の憎しみや怒りが違和感となって画面を包み、とても不気味でもあった。

 

観終わったあと、邦題の「手紙は憶えている」という言葉がズーンと心に響く。( 原題は「Remember」)

映画館で観ていたら、しばらく立ち上がれなかっただろうな、と思える見応えのある映画だった。